平成12年 8月17日            15時00分 〜 16時30分
          講義「情報教育を支える技術と課題」
                        神奈川県立平塚ろう学校教頭
                                   田村 順一
(研修内容)
○単なる“計算機付きのワープロ”に過ぎなかったパーソナルコンピュータが、ネットワークの登場でビジネスの必須ツールへと押し上げられた。さらにインターネットの商業利用が許可されて以来、コンピュータやネットワークは、ビジネスツールから日常生活の必須アイテムへと一段シフトしはじめている。  
○誰もがプライベートで電子メールを使い、雑誌をめくるようにホームページを閲覧する。
あらゆる商品・サービスがインターネット上のバーチャルモール(仮想商店)で買うことができる。支払いもネットワーク上で決済できる電子マネーで行われる……。近い将来、こんな時代が来るかもしれない。
○私たちの生活はますます快適になっていくと同時に、心身の障害や、国内・国外の地域格差を越えていくことができる。 
○イントラネットでは、インターネットと同じソフトを利用するため、電子メールのやりとりやホームページの閲覧など、外部でも内部でも同じ操作で使えるのは大きな魅力である。
○エクストラネット(イントラネットを既存の通信回線で相互接続したもの)−エクストラネットは一般の電話回線を利用することから、セキュリティ面で問題ありとする声が高かった。だが現在は暗号化技術の進歩によりセキュリティの質が大幅に向上。大規模ネットワークを安価に構築する方法として、注目を集めている。 銀行などの特殊業務をのぞき、ほとんどの企業内ネットワークが何らかの形でインターネットと接続されている。
今後もこの傾向は大きくなっていくと予想される。
○Mobile(モバイル):「可搬性の〜」・「持ち運べる〜」という意味。以前はノートパソコン全般をモバイルコンピュータと呼んだ。現時点では重さ2キロ未満のサブノートからPDA(Personal Digital Assistant)と呼ばれる電子手帳の一種までをモバイルコンピュータと呼ぶようになっている。ちなみに、国内と国外ではモバイルに対するニーズはほぼ正反対。電車移動が基本の日本人ビジネスマンは、小型軽量モバイルコンピュータ。車での移動が中心の外国人ビジネスマンは、多少重くてもデスクトップの機能並みのモバイルコンピュータ。 ここにも、ワークスタイルの違いが現れている。
○オン・デマンド技術−視聴者が見たい聴きたい番組を放送局に指示し、好きな時間に個別に配信を受ける技術。正確には、そのために必要な視聴者と放送局間の双方向通信システムのことをオン・デマンド技術という。 オン・デマンド技術を使用することによって、それぞれの視聴者は、いつでも望む時間に望む番組を見ることができることになっている。
だが一方で、放送局は、それぞれの視聴者ごとに、それぞれ異なる映像を配信しなければならない。ゆえに、放送局にとっては、ひとつの時間帯にひとつの決められた番組を配信するのに比べ、結果的に通信回線にかかるコストが莫大なものとなる。最終的に、その増加したコストは、視聴者の利用金額に跳ね返ってしまう。そこで考えられたのが「ニアー・ビデオ・オン・デマンド」という技術である。これは同じ番組を一定間隔でずらして放映し、視聴者が自分の都合で視聴できるようになっている。デメリットは、視聴者が番組の視聴を完全にコントロールすることができないこと。 メリットは、利点は複数の視聴者が同じ番組を鑑賞するため、回線の負荷が軽減しコストが低下するところ。 
○ビデオ・オン・デマンドにはもうひとつ大きな問題がある。完成した番組を配信するという構造上、野球中継などライブ放送の鑑賞ができない。そこで考案されたものが「ライブ・オン・デマンド」だ。この技術で視聴者は撮影中の映像をリアルタイムで受信することがきる。
○オン・デマンドの本格的な実現には、光ファイバーケーブルなど大量の情報を送ることができる回線を普及させることが必須条件。米国では高速通信網の普及を目的とした情報スーパーハイウェイ構想が発表され一時期話題を呼んだが、経過は芳しくない。本格的なオンンデマンド放送の実現にはもうしばらく時間がかかりそうである。
○インターネットの普及にともなって、増えてきた新種の犯罪がネットワーク犯罪である。
ネットワーク犯罪には、クラッキング、ウィルス、インターネット版マルチ商法などがあるが、とくに恐ろしい犯罪として注目されているのがクラッキング。プロバイダ接続のユーザーがIDとパスワードを盗まれ、多額の接続費用を請求されたなどというのはまだいい方。ひどいものになるとプロバイダに加入している全ユーザーの個人情報がクラッキングされ、ホームページ上で大々的に公開されたという事件もある。  
○日進月歩のコンピュータ業界のなかでも、とくに進化の速い分野がインターネットの世界である。快適で便利なネットワークにするための技術が世界各国で研究され、数多くのアイディアが実現してきた。しかし、それら「夢の新技術」は、それまで守られていた著作権やプライバシーなど多くの権利を踏みにじる危険性と隣り合わせにある。
○MP3−CDクラスの音質を保ちながらデータのサイズを10分の1にできる技術。これは、インターネット上の自由で低コストな音楽配信手段として開発されたものだが、市販の音楽CDをMP3を使い勝手に配信する人間が続出した。そのため現在では、著作権侵害の温床として知られている。 MP3による米国音楽業界全体の被害総額は1億ドルとも、10億ドルともいわれる。MP3の違法配布に対しては、著作権法の改正により取締りが可能となった。  
○インターネットは、自主参加型のメディアであり、情報を発信することに意義がある。○高度情報化社会で活躍するのには、「情報収集スキル」「自己決定スキル」「加工スキル」などが必要であろうと予想される。
○自己決定には、自己責任がともなう。このことについては、幼い時から学習する必要がある。したがって、家庭教育や幼稚園教育での学習が必要となってくる。
○「インターネットは無法地帯」であることを、最終的には子ども自身にわかってもらうことが大事である。
○見えなくても、その先に人間がいるということをいつも意識することが大切。
○教師はどう変わるべきか。求められる姿勢−発想を柔軟に。発想の転換ができるように。
(所感)
 日進月歩の勢いで進歩する情報技術とその裏側にある課題を知ることができた。また、その上に立って、情報教育をどのように進めて行くべきなのか、教師としてどのような心構えで向かうべきなのかを勉強することができた。
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