これでよいのか「チャレンジスクール」    もどる


 この数年県教委で推進してきている「チャレンジスクール」。子ども達に「生きる力」や「豊かな心」を身に付けさせるべく、進められてきている事業である。

 趣旨は次の通りである。

 特色ある教育機能を有する社会教育施設等の県有施設を有効に活用し、小学校における創意工夫を生かした体験的な学習の機会の充実を図ることを通じて、児童の生きる力の育成に資する。
  併せて、開発された学習プログラムを県下の公立小学校に配布・普及し、体験的な学習の一層の充実を図る。


 ところで、伊勢崎市では、平成16年度より全小学校で、この「チャレンジスクール」が実施されることとなった。というよりも、伊勢崎市教育委員会より、全小学校で実施するよう通達があった。そのため、伊勢崎市内の小学校では、(既に開発校として試行してきている学校では準備は万全かも知れないが)来年度に向け大わらわな状況である。
 この件について、いくつかの疑問を感じた私は、県教委に以下のような問い合わせをしてみた。

 お世話になります。私は前橋の石田と申しますが、チャレンジスクールについていくつか教えて下さい。
@チャレンジスクールは、3泊4日と決まっているのですか?
A伊勢崎市の小学校では、来年度から全校で実施されることになっていますが、今後ずっと続けるものなのですか?
B教師、保護者、児童らの意見を参考にして、実施するかしないかを決めるようなシステムにはなっていないのですか?
 
*お忙しいところですが、お答えいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

 この問い合わせに対して、県教委学校指導課より回答の電話があった。以下の通りである。

@について
 平成13年度までは、開発協力校を選定し、3泊4日で実施していたが、現在では3泊4日と決まってはいない。日帰りのものもある。3泊4日というのは、伊勢崎市が決めたことである。

Aについて
 伊勢崎市に問い合わせてほしい。

Bについて
 当然、教師や保護者、児童らの意見が反映されるべきである。

 
 以上のような回答が得られた。
 これらのことから、来年度から伊勢崎市内の全小学校で実施される「チャレンジスクール」は、どうも伊勢崎市教委が独自に決定し行われるようになった事業のようである。しかも、これについては、事前に学校現場はもちろん、保護者や児童の意見などを全く聞かず、独断で決定してしまったものである。
 市から出されている事業の趣旨は、県のそれと同様であり、ある程度は理解できるものである。しかし、一方的に学校現場に押しつけるようなシステムには疑問というよりも憤りさえ感じてしまう。
 それでなくても、既に様々な行事や活動などを実践している学校に、有無を言わせず、「いいことだからやりなさい」と押しつけるのは、どんなものだろうか?
 ましてや、今は、それぞれの学校や地域の特色を生かした教育が求められているときではないか。伊勢崎市教育委員会で行おうとしていることは、まさに現代の教育の流れとは逆行していることと言わざるを得ない。
 伊勢崎市の小学校では、6年生が実施することとなる学校が多くなるが、そのために、今まで行ってきた修学旅行を取りやめる学校も出てきている。修学旅行には修学旅行の目的があるはずだ。今まで連綿として実施されてきた修学旅行を取りやめてまでも、「チャレンジスクール」を実施する価値があるのだろうか。
 しかも、現在伊勢崎市内の小学校では、7月から8月にかけて5年生において臨海学校が実施されている。2泊3日である。泊を伴う活動のため、児童10人に対して1人の引率指導者をあてることとなるので、各校で職員の3分の1から半分ほどを動員する大がかりなものとなる。
 この臨海学校に加え、この3泊4日の「チャレンジスクール」が導入されることになったので、職員や子ども達にかかる負担はとても大きなものとなってしまった。いろいろな教育活動との関係から、この「チャレンジスクール」も夏季休業中に実施されることになる。そうなると、臨海学校にもチャレンジスクールにも関わらなければいけない職員が多く出てくることが予想される。
 
 いずれにしても、現場のことを全く考慮に入れていないこの施策については、伊勢崎市教育委員会にもう一度考え直していただきたい。
 教育委員会は現場に対して指導すべきところでは指導するべきだと思う。しかし、現場の意見を聞かねばならないことについては、しっかりと聞いた上で実践に移すような体制を整えていただきたいと思う。そう切望する。

 (2003. 8.13)