大切な人     もどる

 「彼女はかわいい人である。控えめな人である。何事に対しても一生懸命な人である。そんな彼女と一緒にいるだけで、とても楽しい気分になる。」そう語る友人の瞳は、いつになくとても輝いていた。
 友人は、30半ばを過ぎた男性である。未だに独身である。年齢と風貌に似合わず、純朴な男で、女性に対してはどちらかというと苦手意識を持つ人かも知れない。普段は、女性に対して無関心な様子を見せている。そんな彼が、熱っぽく語る。「彼女は素敵なんだ。一緒にいると元気になれるんだ。どんなことでもいいから力になってあげたいんだ。私にとって、とても大切な人なんだ」と。
 彼の表情は、とても生き生きとしていた。人は、大切な人が自分の近くにいるとき、輝いているのだと思った。生き甲斐を感じるのだと思った。彼の表情をそんなにも生き生きとさせる彼女を一目見たいと思った。