道 徳 学 習 指 導 案                 もどる
                   平成7年 6月14日(水)
                    第2校時( 9:30〜10:15)
                      5年1組 指導者 パンダ
1主題名  友人を大切に〔2−B 友情・信頼〕
         資料名「美佳子さんのなみだ」(一部改作)
          光村「きみがいちばんひかるとき」
 
2主題設定の理由
 @中心価値
   本主題の中心価値は、『小学校学習指導要領 第3章道徳 の第5学  年及び第6学年の内容』に示されたうちの2のBにあたる「互いに信頼  し、学び合って友情を深め、男女仲よく協力し助け合う。」である。こ  れは、第1学年及び第2学年の2のB「友達と仲よくし、助け合う。」  や第3学年及び第4学年の2のB「友達と互いに理解し、信頼し、助け  合う。」から発展している。                      人は、ひとりでは生きていけない。自分の周りにいる多くの人たちに  支えられて生きている。また、人は本来誰もが周りの人を助けようとす  る気持ちを備えている。困っている人が身近にいれば、自然に手を差し  伸べるものである。そのように協力し合う中で、お互いの気持ちが通じ  合い、信頼関係が深まっていく。人はそのような生活経験を重ねていく  ことを通して、他人に対する思いやりの気持ちを身につけたり、人生に  対する充実感を感じたりできるものである。               しかし、人は時に他人に対して猜疑心を抱いたり無関心になったりし  て、協力し合う気持ちを忘れてしまうことがある。それは、周りの人た  ちに支えられていることに気づかなかったり、自己本意な考え方から他  人への理解や思いやりの気持ちなどが欠けていたりすることなどから、  引き起こされるものと考えられる。そこには、互いの信頼関係は存在し  ない。しかしそれでは、明るく生きがいのある人生とは言えない。     やはり、真の充実した人生を送るためには、自分の周りのすべての人  と協力し助け合っていくことが必要である。そのためには、日々の生活  の中で、自己本意なものの考え方を捨て、相手を尊重する気持ちを基盤  に理解を深めていき、互いの信頼関係を強めていこうとする努力をして   いくことが必要である。                       5年生は、精神的にも、身体的にも、大人の状態に近づき始めている  時期である。大人への依存的態度も減少し、自律的態度が徐々に発達し  てきている。価値判断も自律的になりつつあり、高い理想を追い求める  ようにもなっている。しかしその反面、自己主張をするあまり、相手へ  の思いやりの気持ちを欠いた言動が見られることがある。また、第二次  性徴期に入る頃であるため、異性に対して意識し過ぎるあまり、人とし  てあってはならないような一見冷たい行動をとってしまうことがある。   したがって、この時期に、「互いに信頼し、学び合って友情を深め、  男女仲よく協力し助け合う。」態度を養うことはたいへん意義あること  と考える。                              関連価値としては「思いやり・親切」「希望、勇気、不撓不屈」「誠  実・明朗」「公正・公平、正義」などが考えられる。                                      
 A系統性






























 

   内  容  項  目

学年

 主題(資料名)


友達と仲よくし、
助け合う。

(とくに身近にいる友達と仲良く活
動し、助け合うことの大切さを指導
する。)

1年

 

・あさがおのはな
・二わのことり
        など

2年

 

・とりのともだち
・ともだち先生
        など


友達と互いに理解
し、信頼し、助け
合う。

(健康的な仲間集団を積極的に育成
するためにも、友達は互いによく理
解し、信頼し、助け合えるよう指導
する。)

3年


 

・友だち
・明るくなった友達
・絵はがきと切手
        など

4年


 

・いのりの手
・ないた赤おに
・くまと旅人
        など

互いに信頼し、学
び合って友情を深
め、男女仲よく協
力し助け合う。
(友達同士の相互信頼の下に、学び
合う活動を通して互いに磨き合い、
真の友情を育てる。また、第二次性
徴期に入るため、異性に対する正し
い理解と男女間の友情を育てる。)
 

5年



 

・美佳子さんのなみだ
        (本時)
・ことばのおくりもの
・白いテープ
        など

6年


 

・ニコラスとウエーク
・いつまでも仲間
        など
 
 
 B児童の実態
  「友情・信頼」に関して、次のような実態調査をした。    
                      (調査人員-男18人、女16人、計34人)
   班のみんなでヒメダカのたまごの観察をしてきています。今日で一週  間目です。たまごの中のヒメダカもだいぶ成長してきています。ところ  が、友達がフィルムケースに入っているたまごをペトリざらにうつそう  とした時、うっかりして床にこぼしてしまいました。せっかくのたまご  はどこに行ったのか分かりません。
 
  @そんな時、あなたはどうすると思いますか。
   ア だまっていると思う。 
   イ 後で、その子がいない所で他の友達にそのことを言うと思う。    ウ 「何をやっているの。」と言うと思う。   
   エ 「残念だけど仕方ないよ。また新しいたまごで観察し直そう。」     と言うと思う。
   オ 「これからは、おたがいに気をつけようね。」と言うと思う。
 
 
  Aそれはなぜですか。(どんな気持ちがあるからですか。)
   a 友達がかわいそうだから。      
   b 自分には関係がないから。          
   c 自分も困るから。               
   d 友達も反省していると思うから。                 e 悪いことをしたと思うから。         
   f 助け合うことが大切だと思うから。
   g とても残念だから。
 
   回答パターンをあげ、道徳性を分析してみると、次のようになる。
   (A)〔24人〕
      エ−a(3人)…友達を理解し、助け合おうとすることができ              る。                
      エ−d(14人)…      〃                   エ−f(2人)…      〃                   オ−d(1人)…      〃
      オ−f(1人)…      〃
      ア−d(3人)…友達を理解し助け合おうとする気持ちはある              が、上記の者に比べると、友達を励ましてあ              げようとする配慮に欠ける。  
   (B)〔 3人〕
      エ−c(1人)…表面上は友達を思いやる言葉をかけられるが              自分の利害も考えている。 
      エ−g(1人)…      〃                   オ−e(1人)…      〃                                                  (C)〔 1人〕
      イ−b(1人)…友達に対して冷たい言葉をかけないとはいう              ものの、傍観者的であり友情に欠ける。     (D)〔 6人〕
      ウ−c(3人)…友達に対する理解や信頼感が薄く、協力性に              欠けている。                    ウ−g(1人)…      〃                   ウ−d(2人)…      〃
              (道徳的な判断力、心情、態度などの中に矛               盾が存在している。)
 
   A,B,C,Dの順に道徳性は高いと言える。この結果から、友達に  対して真の友情を抱いて、助けようとすることができない児童が3分の  1ほどいることがわかる。また、(A)に属する3分の2の中にも建前  で答えている児童もいる可能性があることを考慮に入れる必要がある。   また、5月6日に実施したソシオメトリーの結果からも同様のことが  分かる。際立った周辺児や孤立児は存在しないものの、排斥したり排斥  されたりする児童が少なからずいた。編成替えをしたばかりであること  もその要因ではあるが、信頼の絆がかたいとは言えない。
   児童の日常の学校生活の様子をみても、ちょっとした気持ちの行き違  いから友達関係が芳しくなくなったり、おもしろ半分のからかいなどを  きっかけに異性間でのトラブルが起きたりすることも時々ある。
   以上のことから考えて、「互いに信頼し、学び合って友情を深め、男  女仲よく協力し助け合う。」態度を養うことは意義あるものと考える。
 B資料観
   クラスの家庭科の実習で、おみそしるとご飯を作っていたが、「わた  し」の班の美佳子さんは、にぼしやみその分量を間違えたりしてへまば  っかりしてしまう。「わたし」は初めのうちは我慢したものの、次第に  イライラしてきて、つい荒い口調で美佳子さんに言ってしまう。そんな  様子に気づいた他の班の橘さんが美佳子さんを慰めて手伝いをしてくれ  たことに対しても、おせっかいと思ってしまう「わたし」。しかし、そ  の後ふと見ると、美佳子さんが大粒の涙をこぼしているのに気づく。他  の班から楽しそうな声が聞こえてくる一方で、「わたし」の気持ちは揺  れ動く。                               こんな内容の資料である。友達の失敗に対して、思いやりの気持ちを  持てずつい責めてしまった「わたし」が、美佳子さんの涙を見て、自分  の言動に後悔の念を抱いたりする。その心の中の葛藤は、児童に自分の  こととして共感させられると思われる。また、他の班にもかかわらず、  手伝ってくれた橘さんの思いやりのある行動が美佳子さんや「わたし」  にどんな気持ちを抱かせたか考えさせることによって、児童により高い  価値観に触れさせることができると考えられる。また、この資料をもと  に、児童の今までの自分自身の生活を振り返らせることは、道徳性を高  めることにつながることと思われる。                  以上のことから、この資料は、本学級の児童にとって適切なものと考  える。
 
3指導方針
 @価値への方向づけの段階では
   資料に関係する絵を掲示しながら、登場人物、あらすじなどを伝え、  興味・関心を持たせるようにする。
 
 A価値の追求・把握の段階では
  @場面を臨場感をもって理解させるため、範読する。
  A美佳子さんが失敗した時の「わたし」の気持ちに共感させる。     B橘さんが手伝ってくれた時の「わたし」や美佳子さんの気持ちを想像   させる。  
  C他の班の楽しそうな声が聞こえる一方で、美佳子さんの大粒な涙に気   づいた後の「わたし」の心の葛藤に共感させる。
  D場面の状況把握がしやすいように絵を掲示する。
  E自分の考えを発表しやすいように、道徳ノートを活用させる。
 
 B価値の主体的自覚の段階では
   今までの自分を振り返らせ、自分の考え方や行動の仕方に気づかせる  とともに、より高い価値に触れさせる。
 
 Cまとめの段階では
   クラスの歌「スクラム組んで」を学級全員で歌うことによって、価値  観に対する意識の継続を図る。
 
 Dその他(同和教育上の配慮)
  @特に配慮すべき児童を観点の違いから次のように分けた。
   X…実態調査の結果や観察により、信頼・友情に関して、配慮する必     要のある児童
   Y…理解力が低いことや発言力がないこと、また精神的に不安定など     のため、授業参加が消極的な児童。
   (Xに対して)
     価値の主体的自覚の段階で、今までの自分を振り返らせ、意図的    指名をすることによって、意識の変容につなげる。
   (Yに対して)
     机間巡視をして適切な助言をする。
  A(すべての児童に対して)
     友達の意見は最後までよく聞かせる。そしてその上で自分の意見    を言わせる。
 
4本時の学習
 @ねらい                                互いに信頼し、学び合って友情を深め、仲よく協力し合っていこうと  する態度を養う。               
 
 A準備
   (教師)プリント「美佳子さんのなみだ」 道徳ノート 絵 ポイン       トカード
   (児童)プリント「美佳子さんのなみだ」 道徳ノート
 
 B展開

指導
 過程

学習活動と
     主な発問

予想される
    児童の反応

指導上の留意点
     は同和教育上配慮


値方
へ向
のづ
 け


1登場人物やあらす
 じを知る。




 

・どんな話だろう。
・もっと詳しく話の
 内容を知りたい。



 

興味や関心をそそる
ためにも、ポイント
を押さえ短い時間で
話す。
場面の状況が理解し
やすいように絵を掲
示する。













32

















 

2資料を読んで話し
 合う。



・何をやっているの
・困るな
・それでも班長なの
・ちゃんとしてよ
・同じ班にならなければよかった
・何とかしてよ

(わたし)
・えらいな
・おせっかいだな
(美佳子さん)
・うれしい
・ありがとう
・もっと注意深くす
 ればよかった

・美佳子に謝る
・美佳子を励まして
 手伝う
・素直な気持ちにな
 って、橘さんにも
 お礼を言う。
・他の班の様子を見
 に行く




 



わたしの気持ちに触
れさせる。

道徳ノートを使用さ
せ、自分の考えを整
理し、発表させる。
机間巡視し、特に配
慮すべき児童Yに適
切な助言を与える。
(11、41、54、83、92、
 93の児童)





「わたし」の心の葛
藤を共感させるとと
もに、いろいろな意
見に触れることによ
って価値観を高めさ
せる。
机間巡視をしながら
特に配慮すべき児童
Xの考えを把握した
り、配慮すべき児童
Yに適切な助言をし
て授業参加を促した
りする。













 

@美佳子さんが失
敗をした時、「わ
たし」はどんな気
持ちになったでし
ょう。
 













 

A橘さんが手伝っ
てくれた時の「わ
たし」や美佳子さ
んの気持ちを想像
しましょう。
 
 









 

B他の班からは楽
しそうな声が聞こ
えます。一方美佳
子さんは大粒の涙
を流しています。
「わたし」は、こ
の後どうするでし
ょう。
 









 



 




の主
 体
 的
 自
 覚








 

3今までの自分を振
 り返る。




・給食のおかずをこ
 ぼした時、一緒に
 拭いてあげた。気
 持ち良かった。
・掃除中にうっかり
 花びんをわってし
 まった友達に対し
 て、強く責めるだ
 けで、何も手伝わ
 なかった。



 



今までの自分は、ど
んな行動をしていた
か気づかせるととも
に、友達の考え方や
行動の仕方を知り、
より高い価値に触れ
させる。
また、配慮すべき児
童Xの意図的指名を
して、意識の変容に
つなげる。
(11、12、13、24、33、41
、52、61、71、72、73、81
、82、83、91、92、93の児童
のうち数名を指名する。)










 

今までの自分は、
友達が失敗した時
など、分かってあ
げたり助けたりし
ましたか。例えば
どんなことがあり
ましたか。また、
その時どんな気持
ちがしましたか
 










 



 









 

4クラスの歌「スク
 ラム組んで」をみ
 んなで歌う。





 

・みんなで力を合わ
 せることは素敵な
 ことなんだな。
・友達のことをよく
 理解してあげるこ
 とが大切なんだ。
・自分から謝る勇気
 を持とう。
 

価値に対する意識の
継続を図る。






 
 
 C評価の観点
   価値の主体的自覚を通し、より高い価値へ意識を向けられたか。
 
                                   (板書計画)
 


 


 


 


 

 美
 佳
 子
 さ
 ん
 の
 な
 み
 だ


 


・・・・・・・・

 3







 

(美佳子さん) (わたし)
・・・・・・・

 2
さわ
んた
のし
気や
持美
ち佳
 子
 


・・・・









 






 






 






 






 






 






 






 






 






 






 






 






 






 






 






 






 






 






 






 






 






 






 

 
                                  
 (クラスの歌「スクラム組んで」)
 
  気軽に肩を組んで
  明るく笑い合える
  僕らはそんな仲間
  いつでもどこでも

  だけど時々あるさ
  仲良しのあの子とけんか
  心の中ではほんとは
  仲直りをしたいのに


 
  そんな時は
  自分から勇気を出して一言
  「ごめんね。」
  と言えばそれですべて解決さ

  がっちりとスクラム組んで
  進んで行こうね
  心やさしい仲間さ
  われら 五年一組
  われら 五年一組