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道 徳 学 習 指 導 案
                              平成13年 3月 5日(火)                                                                第5校時(13:55〜14:40)於:教室
                                6年1組 指導者 パンダ
 
1 主題名  本当の親切  〔2−(2) 思いやり・親切〕 
               資料名「ほっといて」(最終部分の削除)
               出 典 (学研)『みんなのどうとく(群馬県版)』
 
2 主題設定の理由
 (1) 学習指導要領における位置
本主題の中心価値は、「小学校学習指導要領 第3章 道徳の第5学年及び第6学年の内容」の2の(2)「だれに対しても思いやりの心をもち、相手の立場に立って親切にする。」である。これは、第1学年及び第2学年の2の(2)「身近にいる幼い人や高齢者に温かい心で接し、親切にする。」や第3学年及び第4学年の2の(2)「相手のことを思いやり、親切にする。」から発展している。そして、今後は「中学校学習指導要領 第3章 道徳の内容」の2の(2)「温かい人間愛の精神を深め、他の人々に感謝と思いやりの心をもつようにする。」へと発展していく。
 (2) ねらいとする価値
   人は独りでは生きていけない。他と支え合うことにより生きている。支え合うとは、互いを思いやることである。相手の立場に立って考え、助け合うことである。そんな信頼関係に支えられながら生きている時、互いに心の温かさを感じ、共に生きる喜びを味わうことができる。そんな人生は、きっと明るく、夢や希望のある人生であり、充実した人生であろう。しかし、時に人は、相手のためにと言いながら、実際には、お節介ともとれるような軽率で表面的な親切をして、自己満足をしている場合がある。そんなお節介は、相手にとっては嬉しいどころか、迷惑な時もある。真に相手のことを思いやり、相手のためになるような親切をするということは、実際には難しいことである。ましてや自分自身を犠牲にしてまでも行う親切においてはなおさらのことである。
 6年生は、精神的にも身体的にも大人の状態に近づき始めている時期である。大人への依存的態度も減少し、自律的態度が徐々に発達してきている。価値判断も自律的になりつつあり、高い理想を追い求めるようにもなっている。また、仲間意識が高まり、さまざまな活動を友達とともに行ったり、行動範囲が広がり、学校ではもちろんのこと、地域をはじめいろいろな場所で今まで以上にたくさんの人とのかかわりを持ったりするようになる。したがって、生活の中で、相手を思いやって行動しなければならない場面に遭遇することが多くあると思われる。その際に、本当に相手のためになるように考え、自分を犠牲にしてまでも親切な行いができるだろうか。
 以上のように、この時期に「真に相手のためになる親切をしようとする」心情を高めることは、大変意義あることと考える。
 「思いやり・親切」の関連価値としては、「希望・勇気、不撓不屈」「家族愛」「友情・信頼、助け合い」「誠実・明朗」「生命尊重」などが考えられる。
 (3) 児童の実態 (男子14名、女子13名、計27名)
 本学級の児童は、全体的に人なつこく、明るく素直である。思いやり・親切の観点からみると、6年生として今までいろいろな体験を重ねてくる中で、周りの人への思いやりの気持ちが大変備わってきていることが窺える。日常における級友や教師へのさりげない親切、お年寄りへの温かい思いやりのある行動などが多く見られるようになっている。そこで、そんな児童に自分が持っている思いやりや親切の精神よりも道徳性の高いものに触れさせることで、より深い思いやりの気持ちや真の親切とは何なのかに気づかせるとともにさらに高い価値に向かって努力しようという気持ちを持たせることができると考えられる。
   以上のことから考えて、この機会に、「真に相手のためになる親切をしようとする」心情を高めることは意義あるものと考える。
 (4) 内容項目の系統


























 

内 容 項 目

学年

主題(資料名)

身近にいる幼い人や高齢者に温かい心で接し、親切にする。
(特に身近にいる幼い人や高齢者に目を向け、だれに対しても温かい心で接し親切にすることの大切さを指導する。)

1年
 

( 9月)やさしいおねえさん(よしくんのてがみ)
(11月)しんせつになったおおかみ(はしのうえのおおかみ)
 

2年

(10月)よいとおもったら(ぼくらはこうえんたんていだん) ( 1月)しんせつの花をさかせる(こころの花)

相手のことを思いやり、親切にする。
(温かい心とともに、相手に対する思いやりの心を育てる。親切にするという行為も相手のことを考えたものになるよう指導する。)
 

3年
 

(11月)心にひびく思いやり(新幹線で)
(12月)こまっている人のために(おちていたきっぷ)
 

4年

( 7月)こまった人の身になって(みんなでさがしたコンタクトレンズ) (12月)やさしく親切に(心の信号き)

だれに対しても思いやりの心をもち、相手の立場に立って親切にする。
(特に相手の立場に立つことを強調する。どのように対処することが相手のためになるのかをよく考えた親切な行動をしたり、思いやりや親切な心を、児童が接するすべての人に広げていったりすることができるよう指導する。)
 

5年

 

(10月)相手の立場を大切に(二さつのノート)
(12月)たくさんのやさしさ(折り紙の花たば)        
 

6年


 

( 5月)親切へのお礼(ゆず)
( 3月)本当の親切(ほっといて)【本時】


 
 (5) 資料について
   買い物に行った帰り道に、2才ぐらいの女の子が転んでしまったのを見た「わたし」は、起こしてやろうとかけよった。しかし、その女の子の母親に「ほっといてください。」と言われ、「わたし」はいやな思いをする。そして、それから10日ほどしてから、電車に乗っていると、小さな男の子とその母親が乗ってきて「わたし」の席の前に立った。しばらくすると、その男の子は、母親の体につかまりながら、うとうとと目をつぶり始めてしまった。その様子を見て、「わたし」は席をゆずろうか、そのままにしようか迷うのだった。10日ほど前のいやな思い出が頭をよぎっていたからだ。
   こんな内容の資料である。原文は、その後勇気を出して席をゆずり、男の子の母親からお礼を言われたり席について安心して眠り始めた男の子の様子を見たりして、「わたし」が爽やかな気持ちになるところまで記述されている。本時は、「わたし」の迷っている気持ちを自分のこととしてとらえさせるために、敢えて最終部分を削除して児童に提示することとした。
   本資料の内容は、児童にとって身近な事柄を素材としているので、児童は、「わたし」の気持ちに沿って読み進めて行くことができるだろう。女の子を助けようとする「わたし」、「ほっといて〜」と言われたときに不快感を感じる「わたし」に、自分と照らし合わせながら共感することができると思われる。さらに、席をゆずるかどうするか迷う「わたし」の思いを自分のこととしてとらえるとともに、真の親切とはどんなことなのかを改めて考えるよい契機となることが期待される。
以上のことから、本資料は、本学級の児童にとって適切なものと考える。
 
3 指導方針(同和教育にかかわる支援は◎とする。)
 (1)総合的な学習(人権学習「ぼく、わたしにできる?」における学習や体験活動)、学級活動(お別   れパーティー)、日常的な活動(朝の会や帰りの会)などと有機的な関連を図りながら、その中核   として本時を位置づける。
 (2)本時の展開は、「触れる」「深める」「まとめる」の3段階で構成する。そして、それぞれの段階で   は、下記のような点に配慮したい。
  @「触れる」の段階
 ・今まで取り組んできた人権学習における「『ふじの里』でのお年寄りとのふれあい」の時の写    真を提示したり、「人権主張学級大会での作文」を朗読させたりして、その時の取り組みの様    子や心の動きなどを想起させるとともに、本時が思いやりの気持ちをさらに深めるための学習    であることを認識させ、資料へ導入していく。
  A 「深める」の段階の前段
 ・場面を臨場感をもって理解させるように、範読する。
   ・女の子のそばへかけよった時の「わたし」の優しい気持ちに共感させる。
   ・「ほっといて〜」と言われたときの「わたし」の不快感に共感させるとともに、児童の本音を    引き出す。
 ◎席をゆずるかどうするかと悩んでいる「わたし」の心の葛藤を自分のこととしてとらえさせるとともに、本当の親切や深い思いやりについて気づかせる。
◎一人一人の考えを把握するために、座席表(支援表)を活用する。
    ◎自分の考えを整理して発表しやすいように、道徳ノートを活用させる。
◎すべての児童が発言しやすいような受容的な雰囲気を作るよう心がける。
・児童が自他の考えを深め合えるような構造的な板書に心がける。
  B 「深める」の段階の後段
・今までの自分や今の自分をよく見つめさせる。
・何人かに発表させることにより、自分より高い価値に触れさせる。
◎机間指導をしながら、児童の考えに対して共感したり発言を促したりする。
  C 「まとめる」の段階
   ・児童の今までの思いやりのある行動に対して賞賛の言葉をかけたり教師の思いを表現したりす    ることで、価値に対する意識の継続を図る。
 (3) 全体を通して・その他
◎他の人の意見を真剣に聞くようにさせる。
   ・お互いの考えを把握しやすいように、座席をコの字型に配列させる。(学級会時と同じ並び方)
 
4 事前・事後の指導について
(事前)・人権学習で、人権にかかわるさまざまな学習や体験をさせておく。
・日常における親切や思いやりのある行動に関わるアンケートをすることで、親切や思いや りやりの気持ちに対する意識を高めておく。
(事後)・朝の会、帰りの会等で、児童が思いやりのある行動をしたことを取り上げ、賞賛し、意欲づ    けを図る。
 
5 本時の学習活動
 (1) ねらい  
   真に相手のためになる親切をしようとする心情を高める。
 (2) 同和教育の視点
・さまざまな考えに触れるとともに互いに認め合うことにより、自分自身の道徳的価値が高めら れるようにする。
・机間指導で児童の考えを適切に把握し意図的指名をすることで、より多くの児童が活躍できる 機会を作る。
 (3) 準備
   (教師)資料「ほっといて」  道徳ノート  写真  ポイントカード  その他
   (児童)資料「ほっといて」  道徳ノート  作文(代表児童)   
 (4) 展開

指導過程

学習活動と主な発問

 予想される
     児童の反応

 

時 間
 

支援及び留意点
  は同和教育的配慮)

 
基本発問   中心発問  

 

触れる









 

1 今まで取り組んできた  「人権学習」のことを想起 する。





2 今日の学習のめあてを
  知る。
 「ほっといて」という話を  使って勉強していくこと  を知る。

・岩崎先生や宮原先生の話を 聞いて、人権のことでいろ いろなことが分かったな。
・「ふじの里」でお年寄りと ふれあえて楽しかったな。
・人権主張大会では友だちの いろいろな考えや気持ちを 分かち合えたな。
・思いやりの気持ちを深める のか。

・どんな話だろう。
 



5分








 

・写真を提示したり代表児 童に人権作文を読ませる ことで、想起しやすくす る。
・児童のありのままの気持 ちを引き出す。


・今日のめあてを確認す  る。


 

深め






















































 

2 資料を読んで話し合う。      
 

 






・助けてあげたい。
・かわいそう。
・けがはしなかったかな?








・せっかく助けようとしたの に・・・。
・頭に来ちゃうな。
・気分が悪いな。
・助けようとしなくちゃよか った。
・自分のしようとしたことは 間違っていたのかな? 
<ゆずった>
・男の子のことを考えればゆ ずった方がいい。
・男の子は疲れているんだ。 かわってあげたい。
・断られたっていいじゃない か。 
<そのまま>
・また、「ほっといて」と言 われるかもしれない。
・自分には関係ないよ。
・自分だって疲れているん  だ。

22分


































 

・教師による範読    ・一通り読み終わった後の 余韻を大切にしながら、 話し合いに入っていくよ うにする。
内容を理解できない児童
 に助言する。
・「わたし」の優しい気持 ちに共感させる。
・道徳ノートを使用させ、 自分の考えを整理し、発 表させる。ただし、中心 発問で十分に時間をかけ て考えさせたいので、(1) と(2)の発問に対しては 手短に書かせ発表させ  る。
・不快感を味わった「わた し」の気持ちに共感させ るとともに本音を引き出 させる。 


支援表等を使い、児童の 考えを把握し、意図的指
 名をする。
出された意見と自分の意 見を比べさせて、近いも のに挙手させることで、 それぞれの児童の意見を 認めるとともに学習への 参画意識を高める。
・真の親切や深い思いやり について目を向けさせ  る。

 
(1)「わたし」が女の子のそばへかけよったのは、どんな気持ちからでしょう。  
 
 







 
(2) 「ほっといて〜」と言われた時、「わたし」はどんな気持ちがしたでしょう。  
 
 




 
(3) 「わたし」の心は揺れていました。さて、「わたし」は席をゆずったでしょうか?そのままにしたでしょうか?そして、それは、どんな思いからそうしたのでしょうか?  
 
 
 
 
 






 

3 自分を見つめる。


・相手のことを考えられなか ったな。
・親切だと思ってやったけ  ど、実は独りよがりだった んだ。
・お年寄りが横断歩道を渡れ ないとき、手を引いていっ しょに渡っている人を見た ことがある。








 


13分















 


・今までの自分を素直に見 つめ、これからの自分の 姿を考えさせる。
・今の自分を反省して、少 しでも高い価値に近づこ うと努力するような気持 ちが込められた意見や道 徳性の高い経験を持つ児 童の意見があったら、意 図的指名により発表させ る。
・自分のことだけでなく周 りの人で思いやりのある 行動をしている人を見か けたことがあったら、そ ういう例も挙げさせる。・多様な考え方や自分より 高い価値に触れさせる。
 今までの自分は、相手の立場に立って思いやりのある行動ができたでしょうか?
 例えば、どんなことがありましたか? 
 また、その時どんな気持ちがしたでしょうか?
 
 
 
 
 
 
 




 


4 発表を聞く。


 

まとめる


 

5 教師の思いを聞く。





 

・ぼくたちは、思いやりの気 持ちが深まってきているん だな。
・これからも、本当の親切が できる人になっていこう。

 

5分




 

・価値に対する意識の継続 を図る。
・今までの児童の思いやり のある行動に賞賛を与え るとともに、教師の思い を伝える。
 
 (5) 評価の観点  
    自分を見つめたり、他の多様な価値観に触れたりすることを通して、より高い価値へ意識を向   けることができたか。
 
 
 
 
 
 
6 板書計画
















 


 

写真3(「ふじの里」でのお年寄りとのふれあい)
 



 

写真2(「ふじの里」でのお年寄りとのふれあい)
 



 

写真1(「ふじの里」でのお年寄りとのふれあい)
 







 




 




 




 




 




 



 
   





 





 





 





 





 





 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
7 資料
 「ほっといて」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
8 その他
 (1) 歌「守られていたぼく」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 (2) 道徳ノート