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道 徳 学 習 指 導 案
                              平成13年 6月20日(水)   
                              第4校時(11:40〜12:25)於:教室
                                6年1組 指導者 パンダ
 
1 主題名  汗の尊さ  〔4−(4) 勤労、社会奉仕、公共心〕 
               資料名「ぼくの草取り体験」
               出 典 (文部省)『小学校 読み物資料とその利用』
 
2 主題設定の理由
 (1) 学習指導要領における位置
本主題の中心価値は、「小学校学習指導要領(新) 第3章 道徳の第5学年及び第6学年の内容」の4の(4)「働くことの意義を理解し、社会に奉仕する喜びを知って公共のために役に立つことをする。」である。これは、第3学年及び第4学年の4の(2)「働くことの大切さを知り、進んで働く。」から発展している。そして、今後は「中学校学習指導要領 第3章 道徳の内容」の4の(5)「勤労の尊さや意義を理解し、奉仕の精神をもって、公共の福祉と社会の発展に努める。」へと発展していく。
 (2) ねらいとする価値
   人が社会の中で生活していくには、働くことは必須条件である。それは、働くことで初めてその代償として生活の糧を手に入れられるからである。しかし、働くことは決して自分の生活のためだけにあるものではない。社会はそれぞれの個の人間が支え合って生きているのであるから、働くことで社会全体に貢献しているとも言えるのである。つまり、日々の勤労は、自分のためだけではなく社会全体のためにもあるのである。このように考えてくると、社会全体を支えていくためには、代償のある勤労はもちろんであるが、代償のない勤労、つまり奉仕の必要性も見えてくる。人々が他人や公共のために奉仕の精神をもって尽くすような社会は、きっと潤いがあり温かい社会であろう。そんな社会で生きる人々は、共に喜びを分かち合い生き甲斐のある人生を送ることができると思われる。しかし、時に人は、自己本位の考えから、あるいは自分の生活の忙しさや疲れから、公共のために尽くそうという気持ちを持てないことがあるのを否めない。社会に貢献している喜びを感じながら、勤労や奉仕をするということは、実際には難しいことである。
 6年生は、精神的にも身体的にも大人の状態に近づき始めている時期である。大人への依存的態度も減少し、自律的態度が徐々に発達してきている。価値判断も自律的になりつつあり、高い理想を追い求めるようにもなっている。また、行動力が高まり、様々な活動を積極的に行えるようになっている。そのため、学校や家庭・地域社会などいろいろな場面で周りから頼りにされ、勤労や奉仕を求められるようになることが多くなる。しかし、社会の急激な変化に伴い、現代の子ども達の多くには、勤労や奉仕の実体験の不足の傾向が見られる。したがって、そんな子ども達に、勤労や奉仕の意義を理解させ、喜びをもって勤労や奉仕をさせるということが、容易ではなくなっている状況であるといえるのではないだろうか。
 以上のように、この時期に「働くことの意義を理解し、社会に奉仕する喜びを知って公共のために役に立つことをする」心情を高めることは、大変意義あることと考える。
 「勤労、社会奉仕、公共心」の関連価値としては、「役割と責任の自覚」「思いやり・親切」「郷土愛、愛国心」「尊敬・感謝」などが考えられる。
 (3) 児童の実態 (男子14名、女子14名、計28名)
 児童の日常の学校生活の様子を見ると、人なつこく、素直で優しい気持ちの児童が多いことがうかがえる。勤労・奉仕の観点からみると、気が利いていて自分から進んで係や委員会の仕事をする児童が数名見られる。しかし、4月当初の頃は、そうじなど様々な作業に対して、面倒くさがる児童が多く見られた。そのため、その都度指導したり、これまでの生活の中でできるだけ児童と一緒に作業をしたりしてきた。また、委員会などの活動の中でも多くの教師からの適切な指導を受けてきていることと思われる。それらのことが有機的に関連し合って功を奏してきたのか、最近では勤労意欲が少し出てきているようにうかがえる。しかしながら、まだまだ十分とは言えない状況である。日々の掃除や係の活動ではもちろんであるが、先日行ったプール清掃でも同様のことが言える。作業に対して夢中になって取り組める児童もいるが、遊び半分の気持ちで行ってしまっているような意識の低い児童も多くいる。意識や意欲において、大きな個人差がある状況である。しかしながら、もともとは素直で優しい児童が多いので、今まで自分が持っていた勤労意欲や奉仕の精神よりも道徳性の高いものに触れた時、自分の未熟さに気づくとともに、さらに高い価値に向かって努力しようとすることが期待できる。
   以上のことから考えて、この機会に、「働くことの意義を理解し、社会に奉仕する喜びを知って公共のために役に立つことをする」心情を高めることは意義あるものと考える。
 (4) 内容項目の系統

















 

内 容 項 目

学年

主題(資料名)

働くことの大切さを知り、進んで働く。
(仕事に対して誇りや喜びをもち、働くことの意義を自覚し、進んで社会に役に立とうとする心をもった児童を育てる。)

3年
 

(10月)はたらくって気もちいい(朝のそうじ)

 

4年

( 3月)はたらくことの楽しさ(牛のせわ)
 

働くことの意義を理解し、社会に奉仕する喜びを知って公共のために役に立つことをする。
(特に勤労を尊ぶ心を育てながら、働くことの意義を理解して社会に役に立つことができるように指導する。)
 

5年

 

( 7月)働く喜び(Lサイズピーマンとの出会い)
( 2月)人のために働く(生徒のためのネット直し)

 

6年
 

( 6月)汗の尊さ(ぼくの草取り体験)【本時】
(10月)だれもが社会の一員(障害者の父・中村博士)
 
 (5) 資料について
   9月の「学校を美しくする日」に、「ぼく」たち5年生は、裏庭の垣根のそばの草取りをした。はじめの取りかかりはよかったが、次第に面倒になった「ぼく」は、手を抜いて草取りをしていた。他の級友達もほとんどがそんな状態であった。しかし、そんな中、洋だけは丁寧な作業ぶりを見せていた。しかし、そんな洋の行動に対して、「ぼく」は無駄なことをしているぐらいにしか思えなかった。次の日曜日に、町内清掃として公園の草取りに行かねばならなくなった「ぼく」は渋々行き、以前と同様に手抜きをしていた。そんな時、自分から進んで来て、やはり丁寧に作業をしている洋の姿を目にする「ぼく」。洋や周りの大人達の楽しそうに作業をしている様子を見て、今までの自分の行動を反省し真剣に取り組むようになる。その次の日、公園で思い切り遊べて意気揚々としている小さい子ども達の姿を見て、「ぼく」は、自分のやったことが人のために役立っていることに気付き、喜びを覚えるのである。
   こんな内容の資料である。児童にとって身近な事柄を素材としているので、児童は、「ぼく」の気持ちに沿って読み進めて行くことができるだろう。草取りを面倒くさがる「ぼく」、洋や周りの大人達の行動を見て素直に反省する「ぼく」に、自分と照らし合わせながら、共感することができると思われる。さらに、草取りが他の人のために役立ったことを知った時の「ぼく」の喜びを自分のこととして味わえるとともに、勤労の尊さを感じ取ることができるものと予想される。
以上のことから、本資料は、本学級の児童にとって適切なものと考える。
 
3 指導方針(同和教育にかかわる支援は◎とする。)
 (1)教科(国語科)、学校行事(「勤労生産・奉仕」の領域である『プール清掃』という体験活動)、日   常的な活動(朝の会や帰りの会)などと有機的な関連を図りながら、その中核として本時を位置   づける。
 (2)本時の展開は、「触れる」「深める」「まとめる」の3段階で構成する。そして、それぞれの段階で   は、下記のような点に配慮したい。
  @「触れる」の段階
 ・過日6年生で実施した「プール清掃」の時の写真を提示して、その時の取り組みの様子や心の    動きなどを想起させる。
 ・資料に関係する絵を掲示しながら、話の背景や状況、登場人物などを伝え、興味や関心を持た    せるようにする。
  A 「深める」の段階の前段
 ・場面を臨場感をもって理解させるように、範読する。
   ・垣根のそばでの草取りでていねいに作業している洋を見た時の「ぼく」の気持ちに共感させる    とともに、児童の本音を引き出す。
 ・公園での草取りで、ていねいに作業をするようになった「ぼく」の心の変容に気付かせる。そして、その変容のきっかけとなったのは、洋をはじめ大人達のまじめな勤労姿勢であり、大人達への感謝の気持ちを持った洋の視野の広さであることを押さえる。
・他の人に役立つ喜びを感じ、勤労の意義をつかんでいく「ぼく」の思いを味わわせる。
◎一人一人の考えを把握するために、座席表(支援表)を活用する。
    ◎自分の考えを整理して発表しやすいように、道徳ノートを活用させる。
◎すべての児童が発言しやすいような受容的な雰囲気を作るよう心がける。
・児童が自他の考えを深め合えるような構造的な板書に心がける。
  B 「深める」の段階の後段
・今までの自分や今の自分をよく見つめさせる。
・何人かに発表させることにより、自分より高い価値に触れさせる。
◎机間指導をしながら、児童の考えに対して共感したり発言を促したりする。
  C 「まとめる」の段階
   ・作文「プール清掃をして」を代表者に読ませたりすることで、価値に対する意識の継続を図る。
 (3) 全体を通して・その他
◎他の人の意見を真剣に聞くようにさせる。
   ・お互いの考えを把握しやすいように、座席をコの字型に配列させる。(学級会時と同じ並び方)
 
4 事前・事後の指導について
(事前)・作文「プール清掃をして」を書かせ、奉仕的な体験について振り返らせる。
・日常の清掃活動、係活動、委員会活動などへの取り組み方に関わるアンケートをすること で、勤労や奉仕的な活動に対する意識を高めておく。
(事後)・朝の会、帰りの会等で、児童が奉仕的な活動をしたことを取り上げ、賞賛し、意欲付けを図    る。
 
5 本時の学習活動
 (1) ねらい  
   勤労の意義を理解し、社会のために役立つ喜びを知って、自分から進んで働こうとする心情を高  める。
 (2) 同和教育の視点
・さまざまな考えに触れるとともに互いに認め合うことにより、自分自身の道徳的価値が高めら れるようにする。
・机間指導で児童の考えを適切に把握し意図的指名をすることで、より多くの児童が活躍できる 機会を作る。
 (3) 準備
   (教師)資料「ぼくの草取り体験」 道徳ノート 写真 絵 ポイントカード 作文
   (児童)資料「ぼくの草取り体験」 道徳ノート  
 (4) 展開

指導過程

学習活動と主な発問

 予想される
     児童の反応

 

時 間
 

支援及び留意点
  は同和教育的配慮)

 
基本発問   中心発問  

 

触れる










 

1 先日実施した「プール清 掃」のことを想起する。




2 「ぼくの草取り体験」と いう話を使って勉強してい くことを知る。話の背景や 状況、登場人物などを知る。

・つかれたな。
・大変だった。
・きれいになって気持ちよか った。
・ちょっとふざけてしまっ  た。



・どんな話だろう。
・草取りは大変だよね。

・もっと詳しく話の内容を知 りたい。



5分









 

・写真を提示することで、 想起しやすくする。
・児童のありのままの気持 ちを引き出す。


・ポイントを押さえ、短い 時間で話す。  
・場面の状況が理解しやす いように、絵を掲示する。・興味や関心を持って資料 読みができる状況にある か、児童の表情などから 読みとる。
・いやいや作業をする「ぼく」
・ていねいに作業をする洋
・洋には共感できない「ぼく」
 
 
 
 

深め















































 

2 資料を読んで話し合う。      
 

 






・適当にしていればいいんだ よ。
・無駄なことをするな。
・ていねいにする必要はない よ。







・洋君はどこでも一生懸命働 いて偉いな。
・大人の人たちは、子ども達 のために一生懸命やってく れているんだ。
・人のために喜んでやってく れているんだ。
・洋は草取りをしているのは 当たり前のように思ってい るんだ。
・自分のことしか考えていな
 かった自分が恥ずかしい。
・「ぼく」がやったことが、 小さい子ども達のためにな っていると思ったから。
・人のために働くことは、す てきなことだと分かったか ら。

25分
































 

・教師による範読    ・一通り読み終わった後の 余韻を大切にしながら、 話し合いに入っていくよ うにする。
内容を理解できない児童
 に助言する。
・「ぼく」の気持ちに共感 させながら、本音を引き 出す。
・道徳ノートを使用させ、 自分の考えを整理し、発 表させる。ただし、中心 発問で十分に時間をかけ て考えさせたいので、(1) の発問に対しては手短に
 書かせ発表させる。
・自分の至らなさに気づい た「ぼく」の心の変容に 触れさせる。 
支援表等を使い、児童の 考えを把握し、意図的指
 名をする。
出された意見と自分の意 見を比べさせて、近いも のに挙手させることで、 それぞれの児童の意見を 認めるとともに学習への
 参画意識を高める。
・働くことの意義を知った ときに感じた「ぼく」の 喜びに共感させる。


 
(1)垣根のそばでの草取りで ていねいに作業している洋 を見た時、「ぼく」はどん な気持ちだったでしょう。  
 
 
 







 
(2) 公園での草取りで、「ぼ く」は、どんなことを考え て、さっきよりもていねい に草取りをするようになっ たのでしょう。  
 
 
 
 






 
(3) 小さい子どもたちの笑い 声で、「ぼく」は、なぜう れしくなったのでしょう。  
 
 


 

3 自分を見つめる。


・嫌々やることが多かった。
・掃除などを面倒くさがって いたな。
・地域の空き缶拾いで、頑張 ったよ。
・親子環境整備作業では、少 しふざけてしまったかな。





 


10分










 


・今までの自分を素直に見 つめ、これからの自分の 姿を考えさせる。
・今の自分を反省して、少 しでも高い価値に近づこ うと努力するような気持 ちが込められた意見や道 徳性の高い経験を持つ児 童の意見があったら、意 図的指名により発表させ る。
・多様な考え方や自分より 高い価値に触れさせる。
 今までの自分はみんなのため、社会のため、進んで働こうとする気持ちがあっただろうか。   
 
 
 




 


4 発表を聞く。
 

まとめる



 

5 代表者の作文「プール清 掃をして」の朗読を聞く。





 

・働くことって、大変なこと もあるけど、みんなに役だ っているんだな。
・これからは、少しでもみん なのためになれるよう、い ろいろな作業をしよう。

 

5分





 

・価値に対する意識の継続 を図る。
・クラスの仲間の作文を聞 くことで、共感しながら、 今後の生活の中で生かし ていこうとする気持ちに させる。
 
 (5) 評価の観点  
    自分を見つめたり、他の多様な価値観に触れたりすることを通して、より高い価値へ意識を向   けることができたか。
 
6 座席表(支援表)<当日、配布予定>
 
 
 
 
 
 
 
 
7 板書計画(略)
 


 
 
 
8 資料
 「ぼくの草取り体験」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
9 その他
 ○ 道徳ノート